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大阪地方裁判所 平成11年(ワ)10205号 判決 2000年12月20日

原告

横山義人

被告

古賀敦

主文

一  被告は、原告に対し、金二八四万四一六七円及びうち金二五四万四一六七円に対する平成八年五月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを一〇分し、その一を被告の、その余を原告の負担とする。

四  この判決は、一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、金二五二七万二七五〇円及びうち金二四二七万二七五〇円に対する平成八年五月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  争いのない事実

1(本件事故)

(一)  日時 平成八年五月二三日午後六時四〇分ころ

(二)  場所 大阪府吹田市岸部中二丁目二番先吹田市道上

(三)  加害車両 被告運転の自動二輪車(一大阪の九三二一)

(四)  態様 前記吹田市道(北東方向向け一方通行)を出て歩行横断中の原告(昭和一四年一月一六日生、当時五七歳)を加害車両がはねて転倒させたもの

2(責任)

民法七〇九条(前方注視義務違反)、自動車損害賠償保障法三条

3(傷害、治療経過)

(一)  傷害

右足脛骨骨折

(二)  治療経過

市立吹田市民病院

平成八年五月二三日から同年九月一三日まで入院一一四日間

平成八年九月一四日から平成一〇年一月二七日まで通院(実通院日数二五日)

4(損害填補)

二四五万〇三二〇円

二  争点

1  事故態様・過失相殺

(一) 原告

被告は、信号機のない滋賀千野一方通行市道を加害車両を運転して走行していたもので、歩行者がこの道路を随時横断することは十分予想されるから、前方を注視し、歩行者が横断しようとしている場合には、十分停止できる速度で進行する注意義務があるにもかかわらず、前方注視を怠り、かつ、猛スピードで走行した過失により、折から右道路を横断しようとしていた原告をはねたものである。

(二) 被告

本件事故は、原告が路外から道路上に駆け足で進出し、走行中の加害車両と衝突したものであり、横断歩道外を横断しようとした原告にも応分の過失が認められるから、相応の過失相殺をすべきである。

2  後遺障害

(一) 原告

原告の傷害は、平成九年八月二六日症状固定したが、右膝関節及び足首関節にかなりの可動域制限が残り、これにより一生正座ができなくなったばかりか、次のような苦痛を日々味わっており、後遺障害等級一一級に該当する。

(1) 平坦な道でも歩行距離は四キロメートルが限界で、一歩ごとに痛みがある。

(2) 階段は、上り下りとも痛みを伴い、痛みがひどいときには手すりを持たねばならない。坂道も同様で、急勾配には杖が必要である。その結果、散歩とジョギング、山登りが趣味であったのにほとんど不可能となった。

(3) 車の運転も連続二〇ないし三〇分が限界で、それをすぎると痛み出す。

(4) デスクワークをしていても、二〇ないし三〇分ごとに痛みが出て、そのたびに屈伸やマッサージが必要である。

(5) 正座が不可能なので、あぐらをかいても一〇分をすると痛みだし、立ち上がるときにも激痛が走る。

(6) 睡眠中もしばしば突然痛み出すので、仕方なく起き上がって屈伸とマッサージをしなければならない。

(二) 被告

自賠責保険事前認定手続においては、原告の後遺障害について、右下腿部神経症状につき後遺障害等級一四級一〇号と認定されている(争いがない。)。

3  損害

(一) 治療費 一七三万四七五〇円

(二) 入院料 七一万六三四〇円

(三) 入院付添費 八二万七〇九〇円

1万1330円×73日

(四) 入院雑費 三九万三三四〇円

1300円×114日

骨融合促進装置代 二四万五一四〇円

(五) 通院交通費 四万円

1600円×25日

(六) 入通院慰謝料 三〇〇万円

入院一一四日、通院五〇一日(実通院日数二五日)

(七) 逸失利益 一五〇一万一五五〇円

労働能力喪失率 二〇パーセント

原告の平成七年の収入 一一二五万三〇三六円(税引き後)

就労可能年数 一〇年

1125万3036円×0.2×10年×0.667=1501万1550円

(被告・原告は、会社役員として本件事故以降も事故前と変わらぬ収入を得ており、減収はない。また、退院後から日ならず就労復帰している。したがって逸失利益は認められない。)

(八) 後遺障害慰謝料 五〇〇万円

後遺障害等級一一級に対する慰謝料は三六〇万円と算定基準ではされているが、原告の場合には日常的に痛みを伴っているので、これを勘案すれば五〇〇万円を下らない。

(九) 弁護士費用 一〇〇万円

第三判断

一  争点1(事故態様・過失相殺)

証拠(乙三の1ないし6、一三の1ないし6、原告本人)によれば、次の事実が認められる。

1  本件事故現場の状況は別紙交通事故現場見取図(以下地点を指示する場合は同図面による。)あり、幅員五メートルの北東行一方通行道路である(以下「本件道路」という。)。

2  原告は、本件道路南東側に存する宮野ビルから出て、本件道路を横断しようとした際、走行してきた加害車両前面に衝突し、転倒した。

3  被告は、本件道路を南西から北東に向かい走行していたところ、<2>地点で進路右前方約五メートルの<ア>地点に横断しようとしている原告を初めて発見し、急制動の措置を講じたが、間に合わず、約四・六メートル進行した<3>地点で<イ>地点の原告と衝突し、加害車両は更に約四・三メートル前方の<4>地点に停止し、原告は<ウ>地点に転倒した。

以上の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

右に認定した事実によれば、被告には前方不注視の過失が認められ、これが本件事故発生の主たる原因であるというべきであるが、原告にも本件道路を横断するに当たり走行してくる車両の有無について不十分な点があったといえるから、これらの事情を総合考慮すると、本件事故による原告の損害額から一割を過失相殺するのが相当である。

二  争点2(後遺障害)

証拠(甲二、乙六ないし八、原告本人)によれば、次の事実が認められる。

1  原告の後遺障害は、自覚症状として右膝、右下腿の疼痛であり、右膝関節及び右足関節の稼働域が次のとおり制限されており、右下腿にわずかな筋力(持続力)の低下及び大腿周径が左三八・八センチメートルに対し、右三七センチメートルと差が生じている。

他動

自動

膝関節

伸展

〇度

〇度

〇度

〇度

屈曲

一四二度

一五〇度

一四〇度

一五〇度

足関節

背屈

三〇度

三五度

底屈

五〇度

五〇度

五〇度

五〇度

2  原告は、正座ができない状態にある。

以上の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

右のとおりであり、原告の後遺障害については、自賠責保険における事前認定の結果のとおり後遺障害等級一四級一〇号に該当するものと認められ、これを超える後遺障害を認めるに足りる証拠はない。

なお、原告の右膝関節及び右足関節の稼働域制限は、健側の左の稼働域と比較すれば、関節の機能障害があるとまではいえず、疼痛に関しても頑固な神経症状とまでは認めるには至らない(甲四、六の見解は採用できない。)。

三  争点3(損害)

1  治療費 一七三万四七五〇円(甲七、弁論の全趣旨)

2  入院料 七一万六三四〇円(甲七、弁論の全趣旨)

3  入院付添費 一六万五〇〇〇円

原告の受傷の部位及び程度からすると原告の入院期間中当初の一か月間については付添看護の必要が認められ、証拠(原告本人)によれば、原告の妻が付き添ったことが認められるから、一日当たり五五〇〇円としてその三〇日分である一六万五〇〇〇円の入院付添費を要したものと認められる。

5500円×30日=16万5000円

4  入院雑費等 三九万三三四〇円

(一) 入院雑費は、一日当たり一三〇〇円と認めるべきであるから、その一一四日分で一四万八二〇〇円となる。

(二) 骨融合促進装置代二四万五一四〇円(甲七、弁論の全趣旨)

5  通院交通費 四万円(弁論の全趣旨)

6  入通院慰謝料 一六〇万円

原告の受傷の部位、程度及び入通院状況からすると、入通院慰謝料は、一六〇万円と認めるのが相当である。

7  逸失利益

証拠(甲三、五の1ないし5、乙一二、原告本人)によれば、原告は、本件事故当時、宮野医療器株式会社の常務取締役(営業担当)であったこと、その役員報酬及び給与は、本件事故前の平成七年は一三五八万円、本件事故のあった平成八年は一五八〇万円、その後平成九年は一六四九万円、平成一〇年は一七〇一万円、平成一一年は一七四二万八五〇〇円であったことが認められる。

右のとおりであり、原告には本件事故による減収は認められず、却って収入は増加しているのであり、これに前記認定のとおりの原告の後遺障害の内容からすると、原告には後遺障害による逸失利益を認めるには至らないというほかない。

8  後遺障害慰謝料 九〇万円

原告の後遺障害の内容からすれば、後遺障害慰謝料は九〇万円と認めるのが相当である。

9  以上を合計すると、五五四万九四三〇円となる。

四  過失相殺

前記認定判断のとおり、本件事故については一割の過失相殺をすべきであるから、前記損害額合計五五四万九四三〇円からその一割を控除すると、四九九万四四八七円となる。

五  損害填補(二四五万〇三二〇円)

二四五万〇三二〇円が既に損害賠償として支払われているから、これを前記四九九万四四八七円から控除すると、二五四万四一六七円となる。

六  弁護士費用 三〇万円

本件事故と相当因果関係の認められる弁護士費用は三〇万円とするのが相当である。

七  よって、原告の請求は、二八四万四一六七円及び弁護士費用を除く二五四万四一六七円に対する本件事故の日である平成八年五月二三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

(裁判官 吉波佳希)

交通事故現場見取図

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